義手ギタリスト Lisa13さん 2021年のパラリンピック閉会式ではギターソロを担当

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ガールズバンド『BAD BABY BOMB 』のギタリストとして活躍するLisa 13さん。実は生まれつき右手がなく、義手ギタリストとして演奏をしています。幼いころから音楽に囲まれ、高校からプロを目指して渋谷高等学院(現:あずさ第一高等学校)へ入学。今でも在学中の出会いや学びが力になっていると語ります。また、2021年のパラリンピック閉会式ではギターソロを担当。ハンディキャップを個性ととらえ、自分の道を進むLisa 13さんがエールを送ります。

やりたいことは、何でも挑戦
 今、私は『BAD BABY BOMB 』というガールズバンドでギターを担当しています。結成したのは2 0 1 9年。それまでは別のガールズバンドを組んでいたのですが、新しいジャンルの音楽に挑戦したいという思いがあって今のグループを立ち上げました。新型コロナウイルスの蔓延があってまだライブなどは数回しかできていませんが、YoutubeやInstagramなどネットメディアをうまく使いながら、これから活動していきたいと思っています。
 右手がないのは生まれつきです。自分がほかの人と違うと気づいたのは、保育園に入ってからでした。「自分の手の見た目はほかの人と違うな」と思ったのを今でも覚えています。指は動かないので、右の手はものを支えたりするときに使っているだけですね。だけどそれは私の個性。「人と違うから何?私は私」と思って今まで生きてきました。
 音楽に興味を持ったのは小学校高学年の頃でした。家族が音楽好きで、家にはピアノ・ギターなどの楽器が置いてある家庭でした。C Dや音楽映像もジャンルを問わず色々持っていて、そのなかから布袋寅泰さんやXJAPAN のHIDEさんを見つけたんですよね。そこからはもう、ギター一筋。おじいちゃんが持っていたアコースティックギターから初めて、中学1 年生の時にはそれまでためていたお年玉を使って自分用のエレキギターを買いました。でもエレキギターは弦が細くてピックを持たないと弾けないんですよね。そこでどうしようかと思っていたら、父がピックのための義手を作ってくれたんです。今でもギターを弾くときは作った義手をつけて演奏をしています。
 音楽を始めるときは家族も応援してくれました。家族は私がやりたい!と思ったことは何でもやってみたらいいという感じです。ギターをやりたいと思ったのは、純粋に布袋さんやHIDEさんなどのギタリストが、「華があって派手でかっこいい!」と思ったからなんですけど( 笑)けれどもちろん、健常者の方に比べるとできないことはある。だからこそ、両親には「自分でやりたいと思うことなら、人一倍努力しなさい」という教えで育てられました。今このような活動ができているのも、家族のサポートがあって自分という存在を肯定できているからだと思います。

プロとの出会いは財産
 渋谷高等学院( 現:あずさ第一高等学校)に行くことを決めたのは、音楽を本格的にやりたかったから。それまでのギター練習はすべて独学だったので、きちんと先生に教わりたいと思って色々自分で探しました。そこで見つけたのが渋谷高等学院です。当時の渋谷高等学院は甲斐バンドの田中一郎さんやBOWWOWの斉藤光浩さんが講師を務めていて、すぐに「ここじゃん!」と思って( 笑)入るのを決めたのは本当にギターの勉強のことだけでしたね。
 渋谷高等学院で過ごせたのは本当によかったと思います。逆に中学校は本当に嫌で嫌で仕方なかったんですよね。私がこうしたいと思うことを頭ごなしに反対されたり、先生も上から目線で接してきていて。その環境がすごく嫌だった分、自分の個性を認めてくれる渋谷高等学院は過ごしやすかったです。生徒と先生の距離感もほどよい感じで、その部分では本当にいい学校だったなぁと思います。そして実は卒業式では主席・皆勤賞で表彰されました。私の見た目からは驚かれることも多いのですが( 笑)、好きなことができた分、勉強や行事など色々なことに前向きに取り組めたんですよね。
 そしてやりたかった音楽の勉強も本格的に。授業は座って音楽理論を覚えるというよりは、実践が多かったですね。それこそ現役のミュージシャンの方から本には書いていないようなことを教わったり、セッションをしたりということもしました。それは本当にこの学校を選んだからこそできることだと思いました。
 今でも在学中にお世話になった先生方とは交流があります。どの道を選んでもバンドはしているかもしれないけど、最前線で活躍している方たちといい関係でつながれることはなかなかないと思います。スタジオに入る度に、高校生の段階であの工程を踏んでいてよかったなと思っています。

パラリンピックの閉会式で演奏
 先日行われた2 0 2 1 年パラリンピックの閉会式でギターソロを演奏しました。オファーをいただいて初めて開会式・閉会式で色々な演出があると知りました。驚き半分、やはりこのようなお話をいただけたことは大変光栄でした。
 閉会式への出演は事前告知ができなかった分、演奏を見た方からの反響は色々な方面からいただきました。そして、それまでは同じように障がいを抱えたミュージシャンの方との交流はあまりなかったのですが、そこで色々な人と出会って。彼らも自分と同じように目標をもって音楽に取り組んできたんだなぁと思うとすごく感慨深かったですね。何より彼らも障がいを個性ととらえて、自分の強みにしている。そういう方々と一緒にあの場で音楽ができて、ギターをしてきてよかったなと思いました。

好きなことに打ち込んでほしい
 私はすごく前向きだと言われますが、実は嫌な経験もしてきています。今の社会は少しずつ寛容になってきているけど、それでもまだ人と同じようにするように求められる環境はある。だからこそ、個性が認めてもらえる環境にいるのはすごく大事です。
 自分を好きになれるかも、家庭の環境が大きいと思います。私の場合は家族のサポートがありました。だけど、同じように障がいを持つ知人の話を聞いていると、私の恵まれた環境が申し訳なくなるくらい、つらい環境にいた子もいる。自分を否定されたり、好きなことが見つけられなかったり・・。そのような経験をして「私なんか・・」という気持ちになってしまうのは、すごく悲しいことだと思います。
 だからこそ、親御さんにはサポートをしてもらいたいです。特に何かで挫折をしたり、傷ついたりしている時に何もサポートがないと、気分が落ちたまま大人になってしまうと思います。親御さんから見たら「本当に大丈夫なの?」という環境でも、その子が変わりたいと思って選んだ環境や、やりたいことがあって選んだ環境であれば、その場所においてあげてほしい。勉強も大事ですが、その子の意志を尊重してあげれば、しなやかにのびのび成長していけると思います。
 そして、今、自分がどうすればいいか迷っている人はとにかく好きなことを見つけてみてください。好きなことが見つかって目標があれば、それに向かう段階の一つひとつが楽しめるはず。色々なことに挑戦できると自分の引き出しも増やしていけます。自分の気持ちに素直になって、打ち込めるものを見つけてみてください。

  


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